「G77+中国」ハバナ首脳会議(その1)
116カ国の首脳がハバナに参集
「現在の開発課題:科学、技術、イノベーションの役割」をテーマに各国首脳の熱のこもった発言相次ぐ
写真:「G77+中国」首脳会議全体像
9月15日、16日の2日間にわたって、キューバのハバナにあるコンベンションパレスで、「G77+中国」の首脳会議(サミット)が開かれました。「G77+中国」とは、1964年に「非同盟諸国会議」と称され始まった途上国の同盟連合体組織で、加盟国は当初の77か国から着実に増え、現在全世界の134か国が加盟しています。そして、世界人口の80%以上を網羅する世界で最大の規模を誇る政治連合となっています(名称は発足当初の「G77」を今も継承しています)。今回ハバナで首脳会議が開かれたのは、今年キューバが「G77+中国」の議長国を担ったことによります。「G77+中国」ではアフリカ→アジア→中南米との順序で、当該地域の国が毎年順番に議長国を担うことになっています。首脳会議は、コロナの影響等もあり9年ぶりの開催となります。
今年の「G77+中国」首脳会議は、「現在の開発課題:科学、技術、イノベーションの役割」をテーマとし、各国のハイレベル代表がテーマに沿った自国における国家ビジョンを相次いで表明しました。
会議はまず、キューバのディアスカネル大統領による「開会宣言」(詳細は(その2)を参照してください)によって幕が開きました。その次に国連のグテーレス事務総長による首脳会議へのあいさつ(詳細は(その3)を参照してください)がありました。ここで参加した各国首脳種は一旦屋外に出て、グテーレス国連事務総長、キューバのディアスカネル大統領、ラウル陸軍大将の3名を真ん中にしての写真撮影が行われ、写真撮影終了後一般討論に移りました。
写真:会議に参加した首脳たち 真ん中にグテーレス事務総長、ラウル陸軍大将、ディアスカネル大統領の3名
写真:参加した各国首脳が一堂に会した公式写真
各国首脳の発言では、以下の4項目の発言が相次ぎました。
1)議長国キューバによるすばらしい首脳会議開催を踏まえ、各国は、まず米によるキューバに対する厳しい経済封鎖を強く非難するとともに、その制裁に立ち向かっているキューバに対する敬意を表しました。
2)モロッコでの大地震、リビアでの大洪水という直近に起こった未曽有の自然災害を踏まえ、各国はその犠牲者に哀悼の意を表するとともに、もはや待ったなしとなった地球温暖化防止対策、すなわち「共通だが差異ある責任」を原則とし、先進国が二酸化炭素を始めとする温室効果ガスを、今すぐにでも排出ゼロを実現するよう強く要求しました。
3)テーマとなっている「現在の開発課題:科学、技術、イノベーションの役割」では、先進国と途上国には、大きな格差があり、それを解消することが急務であることを、各国が相次いで訴えました。その端的な例として、ディアスカネル大統領は次のような例を挙げています。「現在医療分野での研究開発は、9割が先進国で、途上国には1割もない。」「それは、(先進国での)健康な人がより健康になるための研究開発に注がれ、(途上国での)病気の人を病気から治すことには使われていないのです」と。
4)「科学、技術、イノベーション」のテーマで、国連のグテーレス事務総長はじめ多くの首脳が問題としたのは、「グローバル金融アーキテクチャーの即座の改革」との言葉で語られた、先進国による途上国への金融支配構造の転換でした。語られた金融支配構造とは、2つあります。1つは「ドル覇権」です。「ドル覇権」とは、世界の石油取引でドルが使われることをバックボーンにし、あらゆる取引=売買においてドルによって値段が表示され、ドルの受け渡しで取引が成立する構造です。すなわち、個人であれ、企業であれ、国家であれ、ドルを保有しなければ何もできない社会になっていることです。そして、ドルを保有することとは、究極的には、米の大手銀行に口座を保有しそれを「自由に」使用することができることを意味します。この「自由」を保持できるかどうかは米が勝手に決めることなのです。今のキューバが受けている米による経済封鎖の最大の問題が、この銀行口座が米政府により意図的に凍結していることです。これにより、貿易等において米とは関係ない取引であっても、口座が凍結しているため、すべて取引不成立となってしまいます。お手上げ状態にされているのです。
もう一つの金融支配構造は、IMFを中心とした途上国に対する「債務奴隷」の押し付けです。巨額の債務を負っている途上国は、その高金利の返済のため、優良な資源や資産は先進国に切り売りされ、国内経済政策では、福祉、教育、医療等国民の生活に直結する部分は軒並み大幅に削られ、返済に回されます。それも債務の重荷により有無を言わさずです。このような状態で、まともな科学や技術の進歩を担えるはずがありません。結局途上国はますます取り残されてしまいます。
首脳会議には116カ国が参集、世界最大のサミットがハバナで
今回のハバナにおける首脳会議では、アフリカから46カ国、アジアから34カ国、中南米から33カ国、ヨーロッパから3か国の計116カ国の首脳及び12の国際機関・組織が一堂に会しました。総勢は1300人以上に及びます。また、上記したように各国の首脳の発言が熱にあふれていただけでなく、顔ぶれも31カ国から大統領等の国家元首が、12カ国から副大統領が参加するというものでした。まさにグローバルサウス(南)のサミットでした。
先述したように米の経済封鎖を受けているキューバで行われたこともあり、決してきらびやかで豪勢な会議というわけではないうえ、米等から露骨に「会議に出席するな」の圧力がかかる中で、それをはねのけ多くの首脳がハバナに結集したのです。閉会に際して、キューバのマレロ首相は、「ハバナがグローバルサウスの首都(政治の中心)になった」と今回の首脳会議の成功を誇示しました。
会議は閉幕に当たり、メキシコの「G77+中国」への再度の参加表明を満場一致で歓迎し、参加国全体で「ハバナ宣言」を採択しました。また、来年はウガンダに議長国が移り、2024年1月にはウガンダのカンパラで第3回「グローバルサウス・サミット」を開催することを確認し、2023年の「G77+中国」の首脳会議は閉幕しました。
より詳細な内容を知りたい方は、下記の「cubadebate」にアクセスしてください。
〇 9月15日、「G77+中国」ハバナ首脳会議1日目
http://www.cubadebate.cu/noticias/2023/09/15/comienza-este-viernes-en-la-habana-la-cumbre-del-grupo-de-los-77-y-china/
〇 9月16日、「G77+中国」ハバナ首脳会議2日目
http://www.cubadebate.cu/noticias/2023/09/16/debaten-en-cumbre-del-grupo-de-los-77-y-china-los-desafios-del-sur-global/
以下は「cubadebate」の掲載された首脳会議の時系列を再録したものです。
〇 9月15日(第1日目)
10:02 開幕
10:06 ディアスカネル大統領 開会宣言
10:36 グテーレス国連事務総長 開幕に当たってのあいさつ
11:33 首脳が一堂に会しての屋外での写真撮影
11:59 アフリカ連合:アソウマニ代表
12:13 セントビンセントグレナディーン諸島:ゴンザルベス首相
12:21 アンゴラ:ロウレンソ大統領
12:28 中国:李希 中国共産党中央規律検査委員会書記
12:35 ガーナ:アド大統領
13:02 スリランカ:ウィクラマシンハ大統領
13:16 ベネズエラ:マドゥロ大統領
14:03 ボツワナ:マシシ大統領
14:33 モンゴル:ウクナア大統領
14:49 ドミニカ共和国:アビナデル大統領
14:57 ブルンジ:ンダイシミエ大統領
15:09 バルバドス:モトリー首相
15:26 モザンビーク:ニュシ大統領
15:31 ニカラグア:オルテガ大統領
15:41 パレスチナ:アッバス大統領
15:50 アルゼンチン:フェルナンデス大統領
18:16 メキシコ:イバラ外相
18:22 中央アフリカ共和国:トゥアデラ大統領
18:29 ルワンダ:カガメ大統領
18:33 ジプチ:モハメド首相
18:44 バハマ:ディビス首相
18:54 ガイアナ:フィリップス首相
19:18 コロンビア:ペトロ大統領
19:28 ガボン:シマ首相
19:40 ギニアビサウ:マルティンス首相
19:44 アゼルバイジャン:ガファロワ議長
19:50 赤道ギニア:メス下院議長
20:26 イラン:アバディ経済担当副大臣
20:57 ボリビア:チョケワンカ副大統領
21:00 ザンジバル:ムウィニー大統領
21:04 ナミビア:ムブンバ副大統領
21:10 ベトナム:チャン・ホン・ハ副首相
21:17 ドミニカ国:スケリット首相
21:19 インドネシア:マルスディ外相
21:22 オマーン:アルブサイディ外相
21:25 カンボジア:ナロン副首相
21:28 ナイジェリア:シェッティマ副大統領
21:33 カーボベルデ:フィゲレイド外相
21:34 第1日目終了
〇 9月16日(第2日目)
09:10 第2日目の一般討議開始
09:31 ブラジル:ルーラ大統領
09:41 シンガポール:オスマン首相府大臣
09:51 ガンビア:タンガラ外相
09:57 ジャマイカ:スミス外相
10:09 アンティグアバーブーダ:グリーン外相
10:14 バーレーン:ザヤニ外相
10:34 セントクリストファー・ネイビス:ダグラス外相
10:38 ネパール:ブサル農業畜産開発大臣
10:58 イエメン:ビンムバラク外相
11:12 パナマ:メンコモ外相
11:15 ラテンアメリカ・カリブ海経済委員会:シリナックス事務局長
11:28 南アフリカ:パンドール国際関係協力大臣
11:32 コンゴ:ガコッソ外相
11:35 マレーシア:ディアラジャ外相
11:39 東ティモール:フレイタス外務協力大臣
11:45 トリニダード・トバコ:ブラウン外相
11:53 ジンバブエ:シャバ外相
11:57 ソマリア:ジャマ外相
12:07 ニジェール:バカリー外相
12:20 カメルーン:外相
12:46 エジプト:アフメド高等教育科学研究大臣
13:22 フィリピン:ソリダム科学技術長官
13:36 チリ:エチェバリー科学技術大臣
13:39 ブルキナファソ:バジー社会保護大臣
13:44 シリア:ヤギ財務大臣
13:47 国連気候変動枠組み条約:スティール事務局長
13:51 ホンジュラス:カストロ大統領
14:08 マリ:マイガ国務大臣
14:17 アルジェリア:ベッダリ高等教育科学研究大臣
14:29 バングラデシュ:マレケ保健大臣
14:36 キリバス:モレティ女性・青年大臣
16:05 マラウイ:ウィリマ教育大臣
16:12 国連貿易開発会議:グリンスパン事務局長
16:29:メキシコ再度の「G77+中国」への参加表明を満場一致で歓迎
16:54 『ハバナ宣言』万雷の拍手で採択
17:26 キューバのマレロ首相による「閉会の辞」
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