「キューバ共産党第7回大会」資料集より フィデル・カストロ 特別演説
6.フィデル・カストロ 特別演説
まことの忠誠心と団結力をもって、新たな時代へ踏みだそう、
そして今ある問題の改善に取り組もう!
フィデル・カストロ
同志よ。危機の時代、すべての人民を導いていくのは、並大抵のことではない。人民の協力なしに、変革はあり得ない。このような1千人以上集う大集会で--ここには900人より大勢いるだろうか--革命戦士である人民自身によって選ばれた代表者たちよ。人民は君たちに権限を委託した。この名誉こそ、人生において最上の贈り物である。人民からの信頼と革命家となる名誉に加わったことは、我々の努力のたまものである。
私はなぜ社会主義者となったのか。あるいは、もっとはっきり言えば、なぜ共産主義者となったのか。人民から職や才能、生命の活力が作り出した物質的財産を搾取した一部の人々は、共産主義という言葉を故意にゆがめ、間違った印象を作り出した。このようなジレンマの中で、いつから生きることを余儀なくされたのか。ここにいる聴衆は承知のことであるが、すべての人に分かってもらいたい。
私はただ理解してもらいたいだけだ。私は無教養でも、過激な思想家でも、盲目でもないことを。また、我流の経済学の研究に都合良く合わせてイデオロギーを確立したわけでもないことを。
法学や政治学の学生であった頃、師となる人はいなかったが、ここでのイデオロギーの確立は重要であった。20歳前後であった私は、スポーツにいそしみ、山登りもした。マルクス・レーニン主義の研究を手助けしてくれる師もおらず、単なる理論家にすぎなかったが、ソ連邦に絶大な信頼をおいた。レーニンの成し遂げたことは、70年後、無残に崩れ落ちた。なんという、歴史的教訓であろう。ロシア革命のような巨大な社会主義革命を人類がもう一度手にするために、さらに70年を費やすべきではないと確信している。それは植民地主義、そしてそれと不可分の関係にある帝国主義に対して立ち向かうという、もう一つの重要な歩みとなるのだ。
だが、どうだろう、現在、さらなる危機が迫っている。近代兵器の破壊的な力の暴走は平和を揺るがし、この地上の人の営みを脅かしている。
人類は恐竜のように絶滅してしまうのだろうか。賢く生きる新たな方法が求められる時代がやってきたのだろう。圧倒的多数の科学者が認めているように、太陽の熱は強さを増し、もしかしたら、いずれソーラーシステムや惑星を溶かすほどになるかもしれない。多様な学説のどれが真実なのか我々素人にはよく分からないところもあるが、実践的な人間であろうとすれば一層よく学び、現実に対処しなければならない。人類がさらに一層長く生き延びるなら、未来の世代は、我々が知っている以上にたくさんのことを知るだろうが、まず第一に彼らは一つの巨大な問題を解決しなければならない。すなわち飲料水にも事欠き、必要とする天然資源にも恵まれていないという現実に置かれている数億の人類に対して食糧をどう確保するのかという問題である。
もしかしたら、疑問に思うかもしれない。このスピーチのどこに政治的要素があるのかと。残念であるが、これら穏健な言葉の中にこそ政治があると言わねばならない。ただ多くの人々がこの現実に関心を持ちさえすれば、そしてアダムとイブが禁断のリンゴを食べた時代と同じように欲望を続けることを断ち切れれば。アフリカの飢えた人々に誰が食物を供給するのか、給水の技術も、雨水も、水をためる貯水池や貯水用のタンクさえない砂漠の地で。気候に関する合意文書に世界のほとんどすべての政府が署名したが、彼らが何を言うかを見たいものだ。我々は絶えずこの問題を議論し続けなければならない。さて私
はこの問題についてはそろそろ終わりにしよう。
私はもうすぐ90歳になる。そうなることを考えたこともなかったし、そのための努力もしていなかった、偶然の成り行きである。私も例にもれず、死はまもなくやって来るだろう。我々はすべていずれそうなる。しかしキューバの共産主義者たちの思想はこの世界に一つの証として残るだろう。すなわち、この星において、熱意と誇りを持って働くことが出来れば、人間が必要とする物質的な富や文化的な富を築くことが出来る、そしてこれらを得るためには闘い続けねばならない、という証である(拍手)。ラテンアメリカ大陸と世界にいる我らの兄弟たちに、キューバ人民は勝利するだろうということを伝えていかねばならない。
もしかしたら、このような場で話をするのも最後かもしれない。すべての信頼をおく君たちの会議への招待と演説する素晴らしい機会に感謝する。君たちすべてに対して、そして誰よりもまず、同志ラウル・カストロにその素晴らしい功績に対して、賛辞をおくりたい。おめでとう。
まことの忠誠心と団結力をもって、新たな時代へ踏みだそう、そして今ある問題の改善に取り組もう、マルテイやマセオ、ゴメスのように、たゆまぬ進歩を。