ミゲル・ディアスカネル大統領の国会閉会演説
キューバ大使館資料 2022 年 7 月 22 日、
人民権力全国議会(国会)第 9 立法期第 9 通常会期における ミゲル・ディアスカネル大統領の閉会演説
抜粋(仮訳)
国際関係 国会議員諸君、
国際関係は、危険な状況にある。
その代償は、すでに何百万人もの人々が被っている。
NATO の拡大を通じて国家や国家群を従属させようとする米国の攻勢は、必然的に緊張と対 立の情勢をもたらし、その結果は予測不可能である。
世界は変わったのだ。今は、米国がいかなる国家にもその意思を押し付けることができ、疑う余地のない一極覇権を享受していると信じていた 1990 年代初頭の時代ではない。
また、主権国家の全住民を強制的な手段で経済的困難に陥れ、彼らから譲歩を引き出すという犯罪行為も、政治的成功をもたらさない。
だからこそ、世界の多くの人々が、キューバ革命、アメリカ帝国主の侵略に対するわが国 民の不屈の抵抗、そして私たちが守る正義とヒューマニズムの営みを賞賛するのである。
また、思想的には革命に同調しないにしても、米国のキューバに対する虐待と不道徳な政策を単に拒否している人たちもいる。
アメリカ政府が、キューバに対する経済封鎖と無慈悲な戦争を、「キューバ国民の幸福への 配慮」「人権尊重への配慮」「民主主義の促進への願い」によるものだと主張するとき、だれもが不誠実な行為だと警告する。
彼らは嘘をついているのだ! 人権と民主主義に関する米 国の暗黒の歴史的記録はよく知られている。
あの国で日常的に起きている虐待もそうだ。 米国の軍事学校で訓練・教育され、特殊部隊に従属し、さらにはラテンアメリカ諸国の米国 大使館に従属する抑圧勢力によってこの西半球で行われた最も凶悪な犯罪に、米国政府が加 担し直接責任を負っていることを、人々はますます明らかに認識するようになっている。
それらの事実を証明する歴史的な記録もある。 この記録は、彼らの目的がキューバの革命プロセスとそれが持つ意味を破壊することである ことを非常にはっきりとあらわしている。そして、彼らの世界に対する指南書に代わる道を 敢えて選ぶ者は、キューバのように、アメリカ合衆国に永続的な敵意を持たれる危険性があ るという警告を発している。
それが、キューバ、ベネズエラ、ニカラグアに対する攻撃性、2019 年のボリビアに対する クーデター、その他ラテンアメリカやカリブ海諸国におけるクーデターの説明である。 ラ テンアメリカやカリブ海諸国だけでなく、他の地域でも多くの政府に対して、国民の正当な 主張や期待が実現されないように、圧力や脅迫が行われている。
それが去る 6 月にカリフォ ルニア州ロサンゼルスで開催された、失敗した米州サミットでの排除の理由だった。
その状況の中で、米国の差別的・排他的な行動はブーメランとなったのである。
今回のサ ミットはキューバや他の国々を孤立させるどころか、米国の対西半球政策の孤立を示す結果に終わった。
議論の基調を成したのは、排除を拒否する宣言や対キューバ経済封鎖の撤廃要求、そして米州機構 (OAS) 、特にその現事務総長に向けた疑問であった。
サミットに合わせて、ロサンゼルスでは大衆参加による「諸国民のサミット」(これぞ真の サミット!)が開催され、多くの進歩的勢力や社会・地域・労働組合団体が参加した。
彼らは自らの権利を主張し、平和を擁護し、不公平な経済・政治秩序の不正に終止符を打つよう要求するために、そこに赴いた。その秩序とは多数派を犠牲にし、環境を無制限に搾取することで、企業エリートや多国籍大資本を優遇するものである。
わが国に対する攻撃性に話を戻すと、米国務省にはキューバをテロ支援国家に指定するよう 主張する手段も根拠もないのである。米国の政治家や政府関係者で、その主張を率直に支持できる人はいない。
そのような誹謗中傷を裏付ける、信頼に足る証拠を提示できた人はいな い。
テロ支援国家指定は、私たちのような小国にとって著しく不利な結果をもたらしている。
海外との金融・商取引に大きな打撃を与えている。
金融機関へのアクセスや決済・与信の可 能性を阻害している。
私たちの団体・組織に汚名を着せ、長年生産的な関係を築いてきた海外機関とすら、交流するのが極めて困難になっている。
容認できないのは、米国政府が一方的に、誰からの委任もなく、その主張を立証する義務も 認識せずに、他国の政府を裁く特権を行使していることである。
国務省は同リストや類似の リストを政治的圧力の道具として使っている。
テロや宗教、人権、汚職などセンシティブな 問題をご都合主義的に操作し、主権国家から譲歩を引き出したり、米国の利益に反する場合は罰したりしている。
2019 年以降、ドナルド・トランプ政権が適用した強化策と最大限の圧力はすでに、経済戦 争を質的に攻撃的な次元に引き上げた。その結果、すべてのキューバ人の生活に被害を与え、 国の発展を推進する取り組みに対しても影響を及ぼした。
この攻撃性は、キューバを政治的 に不安定化させる目的で、絶え間なく続く転覆工作プログラムを通じてさらに強化されてい る。 米国政府はこの目的のために、毎年数千万ドルを税金である連邦予算から支出している。
偽情報や中傷、信用失墜、情報による抹殺のキャンペーンに特化した高度な技術インフラに支えられ、彼らはキューバに対して「非通常型戦争」方式を適用している。
この方式はすで に、世界の他の地域で深刻な人的・物的犠牲を払ってテストされ、適用済みである。
彼らは、主に南フロリダを拠点とする反キューバ・マフィアの政治的影響力に屈している。
反キューバ・マフィアはキューバと中南米地域の革命的・進歩的プロセスを標的とする攻撃 の第一線に身を置き、その目的のために不寛容や脅迫、強要、恐喝を推し進め、その他のあらゆる暴力的方法を使って異なる考え方を禁止し、コミュニティ内で母国への敬意や友情、 親愛、または連帯を表明する人たちまでも痛めつけようとしている。
欺瞞的なやり方で、彼らはこのギャンググループを米国在住のキューバ系市民集団と同一視 しようとしている。
キューバ系市民の多くはキューバに親しみ、家族や友人と連絡を取り合 い、キューバを尊重し、外国の大国が小国を絶えず不当に扱うことに反対している。
その多 くが連帯を表明しているが、もっと控えめなやり方で示している人もいる。
米国政府は今年 7 月、キューバで再び市民暴動を強行しようとしたが、失敗した。
2021 年に試み、失敗したように。公然とこれを行い、高官の積極的な参加を得て、強力なデジタル プラットフォームを軸とする大規模なプロパガンダ・キャンペーンを展開した。
これを達成 するため、最大限の経済的圧力をかける政策に依存したが、その狙いはキューバ国民の生活 水準を低下させ、電力などの必須サービスの提供に問題を生じさせ、消費水準と基本財への アクセスに打撃を与えることなどであった。
私が話しているのは過去のことではなく、この 悪らつな政策は現在も生きて機能しているのだ。
経済封鎖が続くという考えに私たちは慣れなければならない。
帝国主義はキューバに向け たその冷酷な武器を簡単には手放さないだろう。
経済的な課題の解決は、封鎖の影響のも とで、封鎖にもかかわらず、私たちの努力と創造力によって見出されなければならない。そ れが当面の課題であり、長期的な課題でもある。私たちの義務はあらゆる片隅で、あらゆる 機会を捉えて、この経済戦争を糾弾し、闘うことである。
私たちは、米国政府と相互尊重の関係に向けたより一層の理解の可能性を排除しない。
キュ ーバが自らの主権を損なうことなく、かかる方向へ進み、いかなる問題についても対話する 意思があることは周知のとおりである。
私たちは、キューバに歩み寄ろうとする米国の多くのセクターと可能な限り幅広い結びつき を築き、その促進を続けていく。
その中には、キューバ出身の米国人または米国在住者も含 まれる。
私たちは、大きな違いはあっても、二国間の交流には相互の利益があると確信する。
キューバの外交関係の発展の実績は、平和、協力、連帯の促進が私たちの国際構想における 明確な特徴であることを示すものである。
私たちは、中南米・カリブ海地域やその他の地域 においてもこれを実証している。
私たちには帝国主義の論理を変える力はない。
しかし、私たちは反帝国主義および社会主義 の論理により、社会主義的建設を放棄しない。
なぜなら、それが最大可能な社会正義に至る 唯一の道であるからだ。
最も簡単なのは、降伏し、多くの世代が闘争し抵抗してきた全ての理想を壊してしまうこと だろう。
最も単純なのは、この地域の多くの新自由主義政権がそうしたように、国を売って しまうことだろう。
私たちの社会主義の論理は人間主義であり、排除に逆行する。
私たちは、経済成長しつつ、 富を公平に分配するより良い社会の理想に奮起する。
私たちは、社会的平等を伴う発展のた めに闘う。
経済 我が国の経済は、必要とする外貨収入確保が困難を極める非常に複雑な状況にある。
2 年に及ぶパンデミックと欧州の戦争は燃料、食料、医薬品等、輸入に頼る必需品の価格上 昇の引き金となっているが、封鎖が強化されるかたわら、私たちは諸外国同様にそれらの結 果もたらされた国際経済危機の影響を受けている。
2021 年の実質 GDP は 1.3%の微増となり、2019 年と 2020 年の減少に歯止めがかかったが、 活動レベルはパンデミック前の数年間よりも低いままである。
現時点では、主要生産品目や観光業に大きな回復は見られない。
外貨準備高が少ない中、国民に基本的な商品・サービスの水準を保証し、立場の弱い人々や コミュニティに優先的に配慮するための恒久的な取り組みが行われている。
このような状況の中で非公式の外国為替市場が増殖し、インフレーションによって労働者所 得の購買力が影響を受け続けている。 経済は私たちが直面する主要課題であり、国の経済・社会モデルに沿った大胆な措置で立ち 向かわなければならない。
発表された措置は、外貨の獲得、輸出収入の増加、国内生産の再活性化により国内市場を活 性化させることを目的とするものだ。 この目的のため、経済的根拠に基づく為替レートによるドルを含む外貨の売買を通じた外国 為替市場の回復、国営および民間経済主体への外貨割り当てという二次的制度の拡大、零 細・中小民間企業による国営機関や外資との合弁事業の参加承認、商業目的でない輸入の柔 軟化などが決定された。
これらにより、経済主体や国内市場向けの自国通貨による商品やサービスの供給を徐々に増 やし、外国為替市場を健全化し、不十分な財源を立場の弱い個人や家族のケアに活用し、社 会プログラムを維持・拡大し、保留されている債務や支払いを履行することが期待されている。
この機会に、債権者に対する私たちの責務を果たす意思をあらためて表明する。
私たちの抵抗に賛同してくださった方々に心から感謝申し上げる。
これらの措置は公平性と社会的公正を維持しつつ前進するためのものであり、それを評価・ 実行するためのプログラムも用意されている。
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